10点中6点
8冊目。
去年の最後の記事で予告した本書を読み終えた。
普段文庫は軽い小説ぐらいしか読まないから結構疲れた。
読書猿はこの一冊から始まったで「ほとんどそのまま記事にしたことも多い」とまで書かれてあるからには絶対に読みたいと思っていた本だ。
読書猿のすべての記事に目を通せてるわけではないので確かなことは言えないが、正直そこまでそっくりな箇所は目につかなかった。
おそらくくるぶしさんの思考の根幹となっているので色んな記事がそこから生まれたという感覚があるのだろう。
僕はそこまでのものは思いつかないが、石原千秋と永井均の影響は大きい気がする。
内容はかなり時代を感じた。それもそのはず初めに書かれたのは1979年だそうだ。四捨五入すると40年前だ!
今となってはなくてはならないPC、スマホの活用法なんて当然なく、科学的根拠が疑わしい話もある。読んでそのまますぐ活かせることは少ないだろう。
だが、読む価値が無いかといったらそんなことはない。
漱石、鴎外、芥川、ニーチェ、レヴィ=ストロース、マルクス等々数え切れない知識人を自由自在に引用し、知的トレーニングのあり方について考察する。著者の知識の広さと深さをどのように身に着けてきたか、それを惜しげなく教えてくれる。そんな一冊だ。
それ自体がさまざまな知識人の入門としても機能する。
僕は外国語学習と記憶術の2つの章で取り上げられていた、南方熊楠に非常に興味が湧いた。今までも何度か名前は聞いたり読んだりしていたのだが、今回改めて奇才として取り上げられているのを読んで、もっと知りたくなった。
このように本書を読み終えても、数々の引用から興味の惹かれた学問や知識人へどんどん潜っていける。数多く取り上げられているからこそ多くの人に何かしら引っかかるところがあるのだと思う。
とはいえ先程も書いたがやはり古さは否めない。エコロジーについて観念的な話を長々と書かれていたりとピンとこないところは多数ある。今回(2015年)の文庫にあたってコラムを増補とあるが、1ページのコラムが5つ追加されているのとあとがきのみなのでほとんどアップデートはない。完全改訂版が待たれる。それこそ読書猿が本を出版するようだが、次作はこれだったりしたら飛び上がって喜ぶのだが。
近年本書のような本は殆どない気がする。ビジネス系の頭の鍛え方みたいな本はそれこそ五万とでてるし、脳科学や認知科学など科学よりの本も結構あるとは思うのだが、文学や社会学に詳しい人の引用満載の「知的トレーニング」みたいな直球の本は記憶にない。ビジネス系と一緒にされたくないからそういう本を書くのを敬遠してる学者さんが多いのかな。読んだことないけど佐藤優とかそんな感じなのかしら。あとライフネット生命の人とかか。そのあたりもとりあえずいくつか読んでみたいとは思っているのだが、いつ積読が片付くのやら・・・
やはり巨人の肩に乗るのはものすごく有効であるので、上手い乗り方を教えてくれる本は価値があると思うなぁ。
文学者や社会学者のみなさん!「どや!これが俺の最強の学び方だ!」みたいな本を書いてください!
採点についてはリンクの記事に書いてあります。