10点中8点

論理ガール 〜Lonely Girl〜 人生がときめく数学的思考のモノガタリ
- 作者: 深沢真太郎, ,菅野紗由
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2018/08/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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社畜が加速していることもあり少し読書がしんどくなっていて、物語仕立ての本を読むことが増えている。
ただ、私が読んだ本はどれも読みやすさと学べるもののバランスが良いものばかりでよかった。
本書もまさにその一冊だ。
人づきあいが得意でいわゆるコミュ強で今はホテルマンとしてバリバリ活躍している主人公に母校の高校での講演の依頼がくる。
持ち前のコミュニケーション力をいかし上々の講演を行い、校長先生からもほめられ、LINE交換の生徒の列ができる。
そのあと母校を歩いているいると一人の女子生徒に話しかけられる。「間違ったことを教えないで...」
突然失礼なことを言われ驚きながらも、流そうとする主人公に執拗に否定してくる女子生徒。
いい加減イラっとして反論を試みるも、講演の最初に話した「友達は多いほうがいい」という話を数学的モデルとやらを使い説明され、反論しきれずに論破されてしまう。
主人公は嫌悪感を覚えつつも、その話を面白いと思ってしまい、そこからほかの話についても彼女の見解を聞いていく...
というような導入から始まる話だ。
ラブコメのテンプレのような第一印象が最悪の出会いから徐々に親しくなっていく感じで進んでいく。
本書のタイトルを見て数学ガールの二番煎じかなにかかと思ったが、結構amazonのレビューの評判が良く読んでみたが、確かによかった。
確かに数学の天才女子高生というような立ち位置はミルカさんと似ているが、扱っているテーマが日常生活の人々の悩みに近いような「友達は多ければ多いほうがいいのか」や「仕事の喜びとはなにか」や「恋愛にどんな価値があるのか」といったテーマを扱っていること、そして彼女も彼女なりに色々悩みがありそれが見え隠れするところが大きく異なるところだろう。
友達がテーマの話では"好きなこと"が共通する人々の中心にいることが理想的だと数学的モデルから導出しているがさすがにそれは単純化しすぎだと思った。
それでも全くおかしいわけではないし、他のテーマのモデルはかなり納得できるものも多かった。
あとは「論理的」が口癖の生意気な天才数学女子高生が不器用な悩みに悩んだりしているそのキャラクターが単純に好きになってしまい物語にもひきこまれた。
冒頭にも書いたが、物語仕立てで読みやすく、しかし色々と考えさせられ、日常の問題を数学的モデル化する実例を学べる非常に良い本だと思った。
できれば続編が読みたい...
他に最近(といっても一年以上前のもあるが)読んだ物語調の良書も下記に紹介しておく。一冊ごとに記事を書くつもりだが、今のペースだと書ききるのに相当時間がかかってしまうので簡単に紹介する。
理系でない私には馴染みの浅い行列がテーマの数学ガールの新作。
秘密ノートシリーズは通常の数学ガールよりもかなり難易度が低いのでもし数学ガールの一冊目や二冊目で挫折してしまった人がいたとしても再チャレンジする価値はあると思う。
さすがの数学ガールといった感じで、数学が得意だったり、ずっと勉強している人なら簡単にわかることでも多くの初心者にはピンとこないようなものも理解するプロセスそのものを上手く描写してくれているおかげでほとんどの話が納得できた。
ただその行列を応用して具体的に何ができるかといったことはほとんど語られない。
参考文献が挙げてあるのでそれらに譲る形だろうか。
おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密 (しごとのわ)
男子高校生の主人公と謎の臨時講師の先生、そして町では有名な大きな不動産とパチンコと金貸しを経営しているお嬢様女子高生が仕事や投資といったおカネにまつわる話を学んでいくお話。
自分の家の仕事に強い嫌悪感を持っている女子生徒を中心に結構重たい話もありながら、これまたわかりやすく、そしてストーリーも普通に良く展開していく。
個人的には話の中で、見えざる手の話が仰々しくでてくるのが、せっかくストーリーの中でお金について深く考えていってる中でそこだけありものの知識を並べているように見えてちょっと浮いているように感じた。
まあ曲がりなりにも経済学部を出ているのでなんども聞いた話をわざわざされたのが鼻についただけかもしれない。
それ以外は色々と考えさせられてやはりいい本だった。
どちらの本も、冴えないけど作詞/作曲に興味のある女子高生の主人公が実は同じ学校にいた天才女子高生作詞家/作曲家に教えてもらいながら学んでいく話。
この二冊は特に好きなので一つの記事としてブログに書くためにあまり詳しく触れないが、著者の仰木日向先生は作詞、作曲に限らず若きクリエイターの試行錯誤をエモく書き上げる天才じゃないかと思っている。
作詞、作曲に興味がなくても何か作品を作っていたり、クリエイターにあこがれている人には是非読んでもらいたい二冊。
最近新作の トークバック 1 という小説を出していてそれも今読んでいる。
コンピュータ、どうやってつくったんですか?:はじめて学ぶ、コンピュータの歴史としくみ
他に挙げた本にも増して読みやすさを意識し、平易な言葉と図解、そして妖精が色々と初歩的な疑問を投げかけそれにこたえる形で理解を促している。
しかし解説している内容自体はなかなか高度で、用語はあまり出てこず、簡略化しているとはいえ、コンピュータが、プログラムがどのように動いているのかをひと通りイメージできるよう解説している。
私は川添愛先生の本はこれが初めてだったが、他の作品も評価が高く是非読もうと思っている。