yshkn’s blog

島根に長期出張中の文系卒ITエンジニアの日常

Think clearlyを読んだ

10点中8点

 

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法

 

 
何となく印象的な見た目の本で、書店で手に取って読んでみたが、はじめにを読んでこれは良書だろうと思って購入した。

 

はじめにを簡単にまとめると、以下のようになるだろう。
良い人生とは何か、どうすればよい人生が送れるかは古今東西様々な人が考えてきたが、一向に答えは見つからない。そのような唯一絶対の答えなどはない。ただ、それでも可能性を高めてくれる「思考の道具箱」を持つことが必要だ。

 

この「思考の道具箱」という言葉は私が敬愛してやまない読書猿ブログでブログの一カテゴリーとなっているものと等しい。やはりどんな時でも絶対にうまくいく唯一のやり方は存在しないが、一方でその時々で使える引き出しを蓄えておくことが重要ということだろう。

色々な道具箱の中でも人生のあらゆる場面でついてくる思考について古典哲学や心理学や投資家の思考法から抽出した道具箱を紹介するといった内容だ。
中にはよくある自己啓発書のように論拠が薄い話も一部あるし、52個もの道具箱ということで似たような話や響かない話もあったが、多くは考えさせられ確かに一理ある思考法が紹介されていた。

 

印象に残ったものをかいつまんで紹介したいと思う。

 

1. 「思考の飽和点」に気を付ける
「思考の飽和点」とは、それ以上思い悩んでも一歩も先へ進めない状態へ到達することだ。物事について考えることはもちろん効果的だが、その効果はどんどん逓減していき、飽和点へは意外とすぐ到達すると書かれている。しかし行動に移すより考えることのほうが簡単なので、多くの人は飽和点に近いもしくは達していても、行動に移せず考え続けてしまう。私もまさに考えてばかりで実行できない人間なので耳が痛いし、すぐにやめることはできないが、定期的にこの教えを振り返って気を付けるようにするだけでも多少は効果があるだろう。

 

2.選択肢が多い場合は「秘書問題」が効果的
秘書問題とは本書によると、100人から1人面接で選ぶ(1人ずつ面接し、その場でその人の合否を決める必要がある)場合、37人までは必ず不合格にし、その37人の中で一番良かった人を超える人が来た際、決定すると最も良い人を選択できる可能性が高いという理論だ。
多くの人は最適なタイミングより早すぎるタイミングで決定してしまうらしい。たくさんの選択肢を吟味する心理的・物理的労力に負けてしまうためだ。重要でない選択ならそれでも良いが、重要な選択はできるだけ多くの選択肢にチャレンジし、吟味するほうが良いという話だ。

 

3.「ピーク・エンドの法則」に気を付ける
「ピーク・エンドの法則」はノーベル経済学者のダニエル・カーネマンが発見した法則で、ある体験の満足度の記憶はそのピーク(最高か最悪の体験)とエンド(最後の体験)だけでほとんど決まってしまうという理論だ。
また、「持続の軽視」と呼ばれる、同じくらい楽しかった(辛かった)体験が一週間だったか三週間だったかは満足度の記憶ではほとんど考慮されないという理論も紹介されている。
本書ではこれらの錯覚に騙されて過去の記憶を重要視するのでなく、現在に集中しようと説く。それも重要だが、マーケティングやコンテンツ制作では人々のこういった錯覚を利用して効果を上げることもできるかもしれない(少し悪い気もするが)。

 

4.性急に意見を述べるのをやめる
最低賃金は引き上げられるべきか?難民は引き受けるべきか?新卒一括採用はやめるべきか?
多くの人がこれらの問いにすぐに答えられる。人間には直感に基づく意見をすぐに発信したがる傾向にある。
しかしこのような問題は本来、考慮すべき事柄が多く、思い付きや受け売りでない意見を言うにはしっかりと吟味する必要がある。一度直感で答えを出してしまうと、後付けでその答えを正当化しようとするバイアスが働いてしまい、正しく検討することを妨げてしまう。
専門でもなく関心も薄い、複雑な問題に意見を発信したくなっても、ちゃんと考えたことがないからわからないと、思いとどまった方が良いことが多いだろう。

 

5.フォーカスを絞り、専門分野を持つ
石器時代の人々は火おこしから、狩猟から、周辺の生物の生態までほぼすべての人が会得していただろう、そうでないものは死に絶えただろう。
しかし、高度に細分化された現代社会で、あらゆる職種の専門知識やスキルを会得するなど不可能だ。むしろ多くのことをそれなりできる人の価値は減り続けている。
しかし我々は今でも、多才であることにあこがれ、専門外のことを知らない、できないことを恐れてしまう傾向にある。できないこと、やらないことはさっぱり捨ててしまい、伸ばすべきものに集中し、突き抜ける努力をしなければならない。