10点中9点
法学部での学校生活や勉学について気を付けるべきポイントを法学部の学部生3人が、先生に相談し、教えてもらうという形式の本だ。
私は法学部出身ではないので、あまり下手なことは言えないが、入学時に必修科目の教科書と一緒に買うべき本、それくらいの良書だと思った。
また、半分以上はほかの学部の学生も十分に参考になる内容なので是非とも読んでほしい。
まず素晴らしいのが、本の構成が非常に読みやすく作りこまれていることだ。
章の最初に親しみやすく章の内容も表したイラストがあり、すっと読み進めやすい会話文と通常の解説文が織り交ぜられている。
たくさんの注釈がすぐ下に配置されており、章のまとめや図もあり、至れり尽くせりといった感じだ。
それなりに本を読んできたつもりだが、これほど読みやすさにこだわった構成の本は他に記憶がない。
新書や文庫などでは難しいだろうが、ビジネス本等では取り入れてもらいたい。
そして、本書の1部、2部ではどのようにして効果的に学ぶかというテーマで書かれているが、非常に重要なことを簡潔にわかりやすく書かれており、法学部以外の学生はおろか、社会人にも十分に役立つ内容になっている。
高校までの主に正解を覚えるような勉強との違いや、レポート、ディベートを行う際のポイントやタスク管理の基本までわかりやすくまとめられており、その部分だけでも十分元が取れると思う。
それ以降は法学部の専門科目の考え方や、法学部での卒論をどのように書くかなど、法学部生以外はそのまま利用できる内容は減っていくが、他の学部でも似たような悩みを持つことはよくあるだろう内容が取り上げられており、考えるヒントになるだろう。
上述の通り、社会人にも十分有用な良書ではあるのだが、やはりメインターゲットは大学生となっている。
自分を翻ってみると、なんだかんだ大学を卒業して、5年ほど経っており、学生時代こうしておけばよかったとタイムマシンに乗ってアドバイスしてやりたいことが多数ある。
本当に個人的なことは置いておいても、いくつか生活内容や考え方についてアドバイスがしたく、それは今本当に学生になっている人にも、もしかしたら有用かもしれないので、併せて書いておきたい。
一番初めに伝えたいのが、読書猿ブログをしっかり読めということだ。(なんと「カフェパウゼで法学を」でも紹介されている!)
確か私は3年生くらいのときに存在は知ってパラパラ数記事読んでまあまあ面白いな、といった感想を持ちつつもそれっきりだった気がする。
当時その程度にしか思えなかったのにも何らかの理由はあるとは思うが、今非常に感銘を受けて、記事や著書を読み漁っている自分がいるので、もう少し何かフックがあれば、同じようにできる可能性はあると思う。
学生諸君に読書猿ブログの何が良いか私の言葉で語ることにも意味はあると思うが、今回は「とにかく10記事から20記事程度読んでみろ。きっともっと読みたくなるはずだから。一度でダメなら期間をあけてチャレンジしろ」とだけ言っておきたい。
次に「耳からの学習もなかなかいいぞ」ということで以前書いた二つの記事を挙げておく。
私が今聴いているのは大体がtech系podcastだが、英語学習や、歴史、科学についてもポッドキャストやオーディオブックでいろいろとコンテンツはあるので色々と聴いてみると良い。
上記記事に付け加えると、tech系で最近聴き始めてよかったのがプログラム雑談だ、omoさんに近い感じのプログラミング関係エモ話がちょくちょく聞けるいいpodcastだと思う。
また、この記事を書いている途中に「カフェパウゼで法学を」の著者、横田明美さんがpodcastを始めたのを知ったのでリンクしておく。
ぱうぜトーク • A podcast on Anchor
あと、よく言われることだが、学生と社会人では金銭感覚が変わるというのは非常に感じることだ。
もちろん様々な境遇の人がいるので一概には言えないことだが、なんとか定職につければ、2年目以降くらいからは気にせずとも貯金が貯まっていく人が自分や自分の周りではほとんどなので、100万、200万程度なら3年、4年もあれば返せる。
学生時代に金銭面で踏み出せないことがあっても、今のを思い出し、親に借りたり、奨学金を借りたりするのは悪くない選択肢だと自分は思う。
大学生時代の自分に読ませたい本(当時なかったのも含めて)を厳選して挙げておきたい。
横田明美『カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉』
上述通り。
千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』
紹介済み
アーリック・ボーザー『Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』
まだ紹介できていないが、科学的に効率の良い勉強法本の決定版。独学大全が出るまでは独学者はこれを読み込もう。
仰木日向『作曲少女~平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話~』
言及したことはあるが、作曲に限らず、クリエイティブなチャレンジをしてみようと思える良いライトノベル。
瀧本哲史『ミライの授業』
中学生くらいからでも読めるが大人でも非常に刺激になる未来を考えるための良書。
メアリアン・ウルフ『プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?』
紹介済み
永井均『翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない』
本当に哲学をするとは何かを体感できる。
野矢茂樹『大人のための国語ゼミ』
正しい読解力、文章力を鍛える本の決定版。
スティーヴン・レヴィット, スティーヴン・ダブナー『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』
アッと驚く経済学。
石原千秋『大学生の論文執筆法』
内容的には文学部、社会学部辺り向けではあるが、それ以外でもためになる。
最後にこれまた言われすぎていることだが、やった後悔よりやらない後悔、何事も多少無理してでも挑戦したほうがいい。
正直、今になって思えばあれはやりすぎだったな、あれはやらないほうが良かったといった後悔は皆無で、あの時頑張っておけばという後悔ばかりである。
これにはバイアスがあって、やっていないことにはうまくいくことを期待した後悔となってしまうため、やらない後悔の方を大きく思い返してしまうことがある。
しかしそれを差し引いても間違いなくやらない後悔が大きいと感じるのでやはりこのアドバイスは言わずには終われない。