yshkn’s blog

島根に長期出張中の文系卒ITエンジニアの日常

エンジニアの知的生産術を読んだ

10点中8点

 
エンジニアだけが読むのではもったいない一冊。


第1章 新しいことを学ぶには
この章では学ぶコツがいくつか解説されている。
特に面白いと思ったのは写経についてと抽象化についてだ。
写経は学習効率は悪いが何もわからないものへのとっかかりには効果的。
本物の写経とは異なり、色々と考えながら写経することがポイント(考えたことをコメントに残すとよい)。
抽象化が必要な理由は、仕事でも仕事外でも起こる出来事すべてへの対応を一問一答形式で覚えておくことなどできるはずがなく、抽象化された一般的な知識をそれぞれに当てはめて対応する必要があるからだ。
個々の知識から抽象的な知識を取り出す効果的な方法として挙げられているのが、比較することだ。
ある知識を得たときに、それと似たものを考える。
そして具体的に何が似ているのか、共通点を考える。
何が違うのか、相違点を考える。
なぜ違うのか、違っているようでいて本質は同じなのかと深堀する。
似ているものが思いつかない時の一つの作戦として過去と比較し、過去との共通点、相違点を考えるというのがある。

 

第2章 やる気を出すには
この章では集中してタスクをこなすコツが解説されている。
基本的にはGTDポモドーロテクニックを使おうというもので、テクニック自体は自分知っていたのであまり目新しさはなかったが、タスクの優先順の考え方や、何よりも計測が重要ということが学びになった。
GTDポモドーロテクニックポッドキャストのrebuildの過去回でも詳しく話されていて、個人的にはポッドキャストのほうが記憶に残るのでリンクしておく。

Productivity Extremist (higepon)

 

第3章 記憶を鍛えるには
この章は特にためになった。
Ankiという暗記を効率的に行うソフトウェアがあり、私も存在は知っていたが、どのように使えばいいかいまいちわからず、やらずじまいになっていた。
この章では問題をできるだけ細かくわけるとよい、文章の穴埋め問題も効果的だ、ということを学び、活用するイメージが湧いた。

この章で紹介されている知識を構造化する20のルールの日本語訳を見つけたので下記にリンクする。
効果的な学習法: 知識を定式化する20個のルール (目次)

 

第4章 効率的に読むには
この章では、読むことにフォーカスして、効率的な方法を模索する。
効率的な読書と聞くと真っ先に頭に浮かぶのは速読だ、本書でももちろん言及されていて、速読の方法についても2つほど述べられている。しかし、当然ながら速度を上げると理解度は低下するので、必ずしも、効率的ではないと語られている。重要なのは読む目的やその本の周辺知識の自分の理解レベルに合わせて読む速度を変えることだ。ピンポイントで何かを知りたければ、目次を読んでその箇所だけ探して読めばいい。難しい哲学書を自分のものにしたければ、写経をしたり何度も何度も繰り返し読んだりする必要がある。

 

第5章 考えをまとめるには
この章では「発想法」で有名な川喜多二郎のKJ法を著者が自分流にアレンジを加えたものが具体例豊富に解説されている。
・レポートや企画書、プレゼンについて書きたいことを大きめの付箋100枚を目標にとにかく書き出していく
 あまり考えすぎずにどんどん書いていくことが重要。
・書き出した付箋を一覧し、関係のありそうなグループに分けていき、それぞれに表札をつくる
 既存のジャンル分けや階層的なグループ分けにせず、直感的に関係のありそうなものをグループにしていく。
・それらのグループを配置し、それぞれのグループの関係性を追記していく。グループ内の各付箋についても配置と関係を追記する
・文章化する

 

一回やって満足せず、繰り返すことが重要。

 

第6章 アイデアを思いつくには
イデアを思いつくをもう少し言い換えると、自分が、世間が、いままで考えていないことを考え出すことである。
非常に難しく、定型化もできない。
ただし、全く効率的な方法がないわけではなく、ここではいくつかのヒントが紹介されている。
ある関心領域に関して、どんどんと言語化していき、今まで言語化してこなかったものを言語化する。
そのために色々と本質的な質問をしてみたり、抽象的なイメージを絵にかいてみたり、似ているものに例えて分析してみたり、他者の視点を借りたりする。
今の常識から抜け出す、違和感を見つけ、深掘りし、新しい考えを見つけ出す。

 

第7章 何を学ぶか決めるには
何かを学び、卓越していくにはどうしたら良いかが語られる。
他人から学ぶのは自分一人で学ぶより、効率が良い、そのため他人から学ぶことを意識すると良い。
ただし、それだけだと価値は少ない。
誰か同僚が知っていることを自分も学んだとしても、その人の劣化でしかない。
例え全体の知識量では負けていたとしても、ほかの同僚が知らないことを知っていれば、その領域では自分が一番となる。
おすすめされているのが、なにかをある程度極める、そののち別の何かをある程度極める、そうすると一つでは一番でなくても、その二つをわかるのは自分だけという状況が作りやすく、価値が生まれる。
連続的に、何かを専門的に学ぶことが薦められている。

 

知的作業の様々なことを扱っており、脳科学などにもふれられているため、少し深掘りが足りないところもあるが、著者の試行錯誤の結果が分かりやすくまとめられている読む価値のある一冊だと思う。