10点中7点。
3冊目は「子供の難問」を取り上げる。
編集者が野矢茂樹で多数の哲学者の見開き1.5ページの論考集となっている。
想定読者は小学生から中学生がメインで、幼稚園児や小学校低学年が抱きそうな素朴で根本的な疑問22問について、鷲田清一や永井均、中島義道といった現代の著名な哲学者が回答していくという作りになっている。
哲学を扱った子供向けの本にはよくあるのは、中身は十分大人でも楽しめる、というよりある程度小難しい概念を理解していける一部の子供以外には難しい内容になっていることだ。この本もそういった嫌いはないこともないのだが、できるだけ子供が抱くような疑問に、子供に語りかけるように書かれている。一つの文章が短く、論理を重ねて深く進んでいくようなことはしていないこともあり、普通に本が読めて考えるのが好きな子供なら楽しめるのではないかと思う。
しかし、上記のことの裏返しに、子供向けのものが多いとは言え哲学的な本を何冊か読んで楽しんでいる僕には物足りない所も多い。最近永井均の「翔太と猫のインサイトの夏休み」を読み返して、25のおっさんが読み返しても面白い、根源的なことに関して一歩ずつ思考を深めていくことを体感できる名著だと感じた。それと比べると各文章の執筆者もバラバラで、テーマもバラバラな本書はより広く浅く、初心者向けといった感じがする。
もちろんそういう今まで全く哲学の本を読んだことのない人に興味を持ってもらいたいという思いを込めて作られた本だと思うので、意図通り、興味を持ちやすい内容の著書になっている。
本書を読んで、より深く考えたいテーマや、もっと読んでみたい哲学者を見つけ深みに嵌っていく人がでるのを野矢茂樹は願っているだろうし、僕もそういう人が増えるといいなと思っている。おそらくこの本に興味を持つ多くの人は僕と同じかそれ以上に哲学に詳しいと思うので、ざっと読んで楽しんだら、周りの、あまり詳しくないけど意外と嵌ってくれそうな人なんかにおすすめしてみてほしい。
翔太と猫のインサイトの夏休み―哲学的諸問題へのいざない (ちくま学芸文庫)
- 作者: 永井均
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/08
- メディア: 文庫
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採点についてはリンクの記事に書いてあります。